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AthlonXPのCPUダイ温度を測る(その2)
バンドギャップ電圧理論値使用によるAthlon温度計の校正

2002年6月28日掲載
2002年7月15日修正:記事中にバインドギャップ電圧との掲載はバンドギャップ電圧の間違いでした。訂正してお詫申し上げます

 ダイオードのバンドギャップ電圧理論値1.205Vを利用して、Athlonサーマルダイオード温度計の校正ができることが分かったので、マザーボードから外して、恒温ボックスに入れて温度校正を行ないました。
 校正後のAthlonサーマルダイオード温度計は、サーミスター温度計、秋月温度計とほぼ同じ動きをします。正確な絶対値温度を計測する温度計がないので比較できませんが、オムロン電子体温計、棒状アルコール温度計、マザーツールサーミスタ温度計、秋月温度計キットなどと比較して、Athlon温度計は1℃以内の誤差に収まっていると思います。以下、実験のレポートを公開します。

1.AthlonXP1600+とCeleron366のサーマルダイオード温度計を作る
 Athlon1600+をマザーボードから外し、下図の写真のように、サーマルダイオード端子から電圧を取り出します。電圧の取出しにはソケットピンを使用しました。(注:Athlonのピンは非常に軟らかいのですぐ曲がります。ソケットを抜くときに少し曲げてしまいました。)
手持ちのCeleron366があったので同じようにデータ-を取ってみました。また、表示部は以前製作した秋月温度計キットを使用しています。

AthlonXP1600+ Celeron366 温度計表示部

2.恒温ボックスへの取り付けと秋月温度計のセンサーの貼り付け
 CPUコア温度をなるべく正確に測るため、秋月温度計センサーとマザーツール温度計センサーをアルミテープでコア部に貼り付けました。最初は、3個のセンサーを束ねていたのですが、熱の伝わり方が違うためそれぞれの温度計表示がバラバラになりました。貼り付けることで、Athlon温度計と秋月温度計、Celeron温度計と秋月温度計・マザーツール温度計はほぼ同じ動きをします。

3.熱源の改造
 恒温ボックスに60Wの白熱球を縦に取り付けていたのですが、CPUとあまりにも近くなるため、横に取り付けました。白熱球の熱源調整にはLuconのコントローラーを使っています。
 また、白熱球の放射熱が直接CPUに当たらないようにアルミで遮へい板を設けてあります。
 ウッカリミス:スイッチを切り忘れて110℃まで温度が上昇してしまいました。その時は、遮へい板の両面テープがはがれて、電球の熱がCPUにもろに当たっていました。テスト後マザーボードに復元:CPUは生きていました。(やれやれ)。でもって、今も元気に動いています。)

放射熱遮断のためアルミ板を取り付け 横に取り付けた60Wの白熱球 白熱球コントローラー

4.基準温度計
 比較的入手が容易な温度計はサーミスターセンサーを使ったものがほとんどです。ただし、サーミスターセンサーは「抵抗−温度特性」が非直線であることから使用温度範囲に注意する必要があります。
 今回の実験では、バンドギャップ電圧理論値と室温からAthlonXPダイオード温度計を校正するため、CPUコアの温度を正確に測定する必要があります。
 その基準温度計としてマザーツールの温度計を使用しました。この温度計は30℃近辺ではかなり正確だと思います。オムロン電子体温計との比較では35℃で0.2℃の誤差でした。

マザーツール温度計 DMA001C
測定範囲:-19.5℃〜99.9℃
確度:±1.0℃(10℃〜40℃)、±2.0℃(-19.5〜10℃/40℃〜99.9℃)
分解能:0.1〜0.2℃(10℃〜40℃)、0.2〜0.5℃(-19.5〜10℃/40℃〜99.9℃)
測定周期:2sec
センサー:サーミスター

秋月デジタル温度計キット
測定範囲:-20℃〜+100℃
センサー:SEIKO-S8100B
リニアリティー:±1.0%(-20℃〜80℃)

5.Athlon(Celeron)サーマルダイオード温度計の校正
Athlon温度計の校正は、バンドギャップ電圧理論値(1.205V)を使用して校正を行ないます。
【手順】
(1)温度計等をセットした恒温ボックスを密閉し、1日中室温で放置した状態で、マザーツール温度計の温度を基準温度とします。この時、Athlon(Celeron)温度計のダイオード電圧をMetexマルチメーター(4桁表示)で読み取ります。(朝起きた時もしくは仕事から帰った時点に測定)。室温での測定は何回か行ないました。

(2)バンドギャップ電圧(1.205V)、室温でのAthlonサーマルダイオード電圧、室温(マザーツール温度計の読み)から、サーマルダイオード-温度特性図を作り、1℃あたりのダイオード電圧変化定数を求めます。


(3)この定数を使って、Athlon(Celeron)温度計の高温側の校正を行ないます。
80℃のAthlonサーマルダイオード電圧を計算で求め、その電圧まで温度を上昇させ、Athlon温度計の高温側をセットします。

(4)Athlon(Celeron)温度計の低温側の校正を行ないます。
低温側は朝か夜に、室温でAthlon温度計の低温側を設定します。

(5)上記校正を3〜4回繰り返します。
暇をみつけながらやったもので、一月くらい。かかりました。

6.校正後の温度とサーマルダイオード電圧
Execlデータ-はこちら
定数はそれぞれの温度において、上記グラフを作って求めたものです。

室温 恒温ボックスで加熱
温度(℃) -273.15 25.4 26.3 30 40 50 60 70 80 90
絶対温度(k) 0 298.55 299.45 303.15 313.15 323.15 333.15 343.15 353.15 363.15
AthlonXP(mv) 1205.0 661.7 660.0 653.1 635 616.7 598.5 580.5 562.3 544.1
Celeron336(mv) 1205.0 647.4 645.7 638.7 619.5 600.3 581.2 562.0 542.6 523.3
AthlonXP定数 - 1.8198 1.8200 1.8206 1.8202 1.8205 1.8205 1.8199 1.8199 1.8199
Celeron336定数 - 1.8677 1.8678 1.8681 1.8697 1.8713 1.8724 1.8738 1.8757 1.8772


7.校正後の温度表示状態
 恒温ボックスの白熱球をコントローラーで調整しながら、設定温度に馴染むまで待って撮ったのが次の写真です。
マザーツールのサーミスタ温度計は、80℃以上では分解能が低く一度に0.2〜0.4℃跳ね上がります。

室温(6/23朝) 30℃ 40℃ 50℃
60℃ 70℃ 80℃ 90℃

8.前回の測定温度と比較
 おのさんのデータで温度校正した温度とバンドギャップ電圧を使用して恒温ボックスで校正した温度と比較すると、マザーのサーミスター温度を基準としてみれば、おのさんのデータで校正した方が少し低めです。ただし、SIV・BIOSの温度は1℃単位で変化しますので、読み取り誤差は1℃以上あります。(前回室温をメモしてなかったのは失敗でした)
 また、バンドギャップ電圧を使用して、マザーに取り付けた状態で校正した温度と恒温ボックスで校正した温度を比較してみると0.8℃くらいの差となりました。

無負荷状態での温度
室温 SIV
モニターツール
Athlon
秋月温度計
GIGABYTE GA-7DXRBIOS
おのさんのデータで校正したAthlon温度計との比較 - 43℃ 43.4℃ - 0.4℃
- - 42.8℃ 38℃ 4.8℃
バンドギャップ電圧で
恒温BOX校正した
Athlon温度計との比較
28.0℃ 53℃ 53.7℃ - 0.7℃
28.0℃ - 54.8℃ 49℃ 5.8℃


 マザーに取り付けた状態で校正した温度計の読みと、恒温ボックスで校正した温度計の読みを、Athlonサーマルダイオード電圧を基準に比較してみました。マザーに取り付けた状態で校正した方が0.6〜0.8℃高めですが、これは校正のための基準温度をケース内で測定しており、コア面を測定していないためと思われます。

マザーに取り付けた状態で校正したAthlon温度計の読み(℃) 25 48.3 50 55.2 60
Athlonサーマルダイオード電圧(mV) 664.0 621.8 618.7 609.2 600.5
恒温BOXで校正したAthlon温度計の読み(℃) 24.4 47.6 49.2 54.5 59.2


9.まとめ
 以上の実験から、バンドギャップ電圧理論値1.205Vを利用して、Athlon温度計の温度校正を行なえば、かなり正確に温度校正ができます。ただし、CPUコアの基準温度をいかに正確に測定するかがポイントで、基準になる正確な温度計とコア面の温度を測ることが重要です。

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