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AthlonXPのCPUダイ温度を測る

2002年4月21日掲載
2002年5月2日追記【バンドギャップ電圧とAthlon秋月温度計の校正方法】
2002年5月12日追記
【バンドギャップ電圧理論値使用によるAthlon秋月温度計校正の検証】
2002年7月15日修正:記事中にバインドギャップ電圧との掲載はバンドギャップ電圧の間違いでした。訂正してお詫申し上げます

はじめに
 皆さんもご存知のように、AthlonCPUは2001年6月発売のAthlonMP(Palomino)からサーマルダイオードを搭載し、CPUコア温度の測定が可能となりました。すでに、「おのさん」「だんなさん」はこの内蔵サーマルダイオードによる温度測定をされレポートを公開されています。私も遅ればせながら秋月温度計とAthlonXP1600サーマルダイオードによる温度測定の環境ができましたので公開します。
 特に「おのさん」にはデータ−を活用させていただき感謝申し上げます。「おのさん」のデータ−がなかったら秋月温度計の校正には苦労させられたことでしょう。

1.マザーボードの選択
 マザーボードのBIOSや、付属のシステムモニターには温度表示画面がありますが、この温度測定方法には大きく分けて、@CPU内蔵のサーマルダイオードを使用する方法と、Aサーミスターセンサーを使用する方法の2種類があります。秋月温度計を使用して測定する場合は、ソケットの中央にサーミスターセンサーの付いているマザーボードを選ぶ必要があります。なぜかと言うと、CPUのサーマルダイオードには結線されてないと考えられるからです。
今回使用したマザーは、GIGABYTE GA-7DXRです。

2.Athlonサーマルダイオード端子を確認する
 CPUサーマルダイオード端子のピン位置を知るには、AMDのサイトからデータシートをダウンロードして確認します。Bottomside Viewより、ダイオード・アノードは、THDAでS7ピン、ダイオード・カソードTHDCでU7ピンとなっています。S7ピンとU7ピンの位置は、data sheet-10 Pin Descriptionsに書いてあります。

3.マザーボードの裏側の端子に結線する
 Athlon CPUでダイオードのアノードピンとカソードピン位置が確認できたら、マザーボードの裏側からそのピンにシールド線をハンダ付けします。私はソケットピンを使って接続用端子を作りました。ソケットピンを使うことによってハンダ付けが容易になり端子がしっかり固定します。

4.ダイオード端子電圧を測定する
 ダイオード電圧を取りだす準備ができたら、マザーボードをケースに組み込みます。シールド線端子(サーマルダイオード)にテスターを接続し、100Vコンセントを接続して、パソコン裏面の電源を入れます。このときの電圧は0ボルトのはずです。次にパソコン前面の電源スイッチをONにし起動します。パソコンが起動している時も電圧が0ボルトなら秋月温度計を接続することができます。
 パソコンのコンセントを接続した状態(パソコンの前面の起動スイッチはOFFでもマザーに通電している)で電圧が出る場合は、内蔵サーマルダイオードを使用している可能性があります。ちなみにEpoxEP-BX7(Celeron533A)では起動スイッチOFFの状態で281mVが出ます。

5.秋月温度計を組み立てる
 秋月温度計キットを組み立てます。キットの組み立ては、付属のセンサーがSEIKO-S8100Bとシリコンダイオードの2種類あるので、シリコンダイオード仕様で組み立てます。
 キットの組み立ては「おのさん」「いとうさん」のページを参考にしてください。
 組み立てのポイントはサーマルダイオードに流す電流値の設定です。おのさんのデータ−シートの中にある電流値が使用できるよう抵抗値を選択する必要があります。ICL7136の仕様書では供給電流70〜100uAとありますが、キットの100kΩの抵抗で約24uAとなり、おのさんのデータに25uAのデータ−があるのでこのままとしました。なお、電流値の求め方は、ICL7136のpin1とcommon間のリファレンス電圧を測定し、この電圧とダイオードに直列接続の抵抗(100KΩ)から電流値を求めます。
 計算式は、電流=(リファレンス電圧3.12V−ダイオード電圧0.67V)/100KΩとなります。電流値を大きくするには100KΩの抵抗を50KΩなどの小さな抵抗に変更します。
 なお、秋月温度計マニュアルには、ICL7136のリファレンス電圧は2.9Vとありますが、私の製作している秋月温度計では、ニッケル水素電池電圧9.0Vで3.12V(マンガン電池7.7Vで2.91V)出ます。添付の英文仕様書によると、「Analog COMMON Voltage、Min2.4V、Typ2.8V、Max3.2V」とあります。

VR2(200KΩ)、VR1(100KΩ)の抵抗を下図のように(VR2=47.7KΩ、VR1=38.3KΩ)おおまかに設定しておくと便利です。ただし、この値は温度校正をやりやすくするための参考値です。各部品(抵抗)には許容差がありこの値はバラツクはずです。
ポテンションメーターのピンは切らずに残しておいたほうが測定に便利です。


6.シールド線端子を秋月温度計に接続する
 マザーボードから取り出したサーマルダイオード電圧のシールド線を秋月温度計に接続します。アノード側(写真左端子)を秋月温度計のINに接続、カソ―ド側(写真右端子)をCOMMONに接続します。基板のV+に接続しているのが100KΩの抵抗です。
 

7.秋月温度計の校正
温度計の校正はおのさんのデータ−を活用させていただきました。心より感謝申し上げます。

校正手順
@パソコンの電源はOFFで室温に馴染んだ状態の、サーマルダイオード電圧(秋月温度計のIN−COMMON間)を測定します。このときの室温を他の温度計で確認しておきます。(実験事例:室温21.2℃でサーマルダイオード電圧669.0mV)


AおのさんのホームページよりAthlonXP1600 25uAのデータをEXCELにコピーして使用します。
BAthlonの温度特性(グラフの傾き)は同じと仮定して、室温のサーマルダイオード電圧から、それぞれの温度におけるサーマルダイオード電圧を求めます。CPUサーマルダイオードの電圧・温度変化率は0.1℃=0.185mVとして、EXCEL表を作成します。室温21.2℃のサーマルダイオード電圧669.0mVを20℃に換算するには、669.0mV+0.185mV*12=671.22mVとして計算しました。

温度 20 30 40 50 60 70
25μA XP No2 675 657 639 620 601 582
24μA yamakyo 671.2 653.2 635.2 616.2 597.2 578.2

CEXCELのグラフ散布図を使ってサーマルダイオード温度特性図を作ります。
Dサーマルダイオード温度特性グラフの近似線の書式設定より、計算式【y = -1.8629x + 709.03】を求めます。
E計算式から、温度とサーマルダイオード電圧を求めます。

F秋月温度計の低温側の設定を行なう。温度設定は調整抵抗R2によりパソコンOFFでCPU温度が室温に馴染んだ状態で、サーマルダイオード電圧より求めた温度と合わします。
G秋月温度計の高温側の設定を行なう。パソコンの電源をONにしてサーマルダイオード電圧を測定し、計算式より温度を求めます。調整抵抗R1により高温側の温度を合わせます。Excelファイル(38.5KB)を参考にして下さい。
H同じ要領で、低温側の温度をもう一度合わせます。なるべくマシンが冷めて室温に近い状態がベターです。
I低温側設定、高温側設定の操作を2回くらい繰り返します。
以上で温度校正は完了です。

8.システムモニターとの温度比較

 秋月温度計の校正を行なって、GA-7DXRマザー付属のモニターソフトSIVと比較すると1℃位しか違いが出ません。このモニターソフトSIVは、サーミスターとCPUの接触などを考慮してソフトを作っているようです。その証拠に、BIOSの温度より約5℃高めに表示されます。このモニターソフトSIVはけっこう正確な温度を表示しています。
 秋月温度計の温度校正範囲が20℃〜60℃と少し狭いかもしれませんが、実用上問題ないと考えます。

SIV 秋月 BIOS
43℃ 43.4℃ -
- 42.8℃ 38℃


8.まとめ
 内蔵サーマルダイオードの温度測定に興味のある方は製作にトライしてみてください。クーラーの比較などに役立つと思います。その場合デジタルマルチメーターは4桁表示(mV表示が小数点第一位のもの)がいいでしょう。
 Celeron533A(11.2W)@800Mhzと比べると、AthlonXP1600(56.3W)1400Mhzはかなり発熱します。クーラーやケース排熱などの違いがあり一概に言えませんが私の環境では、Celeronに比べAthlonは10℃以上高温になります。しかし、ワット数と周波数から見れば当然で10℃の差は小さいかもしれません。
 CPUが高性能になる一方で、クーラーと冷却は今後ますます重要なアイテムと言えるでしょう。

さー、次はこの秋月温度計を使って、静音化計画の実行だあー!


2002年5月2日追記

バンドギャップ電圧とAthlon秋月温度計の校正方法

このレポートの公開後、「だんなさん」から次のようなアドバイスをいただきました。
「おのさん」のHPにも書かれているバンドギャップ電圧1.205 [V]を利用して温度校正を行なえばもっと間単に校正できます。サーマルダイオードの温度と電圧の関係は、これらが一次関数で表現できると仮定すると、バンドギャップ電圧の理論値、つまり、(0[K],1.205[V])を用いて、(t1,V1)、(t2,V2)を計測すれば、直線が定義できるので校正を簡単にすることができます。

私なりに考察してみました。
「おのさん」のAthlonXPデータから作成した、yamakyo-AthlonXPサーマル温度特性図を摂氏から絶対温度に変換してバンドギャップ電圧なるものを求めると(数式Xに0を代入)、No2基準1.217V、No3基準1.207Vとなりました。このことからすると、No3基準(-1.8286x)で校正したほうがいいという結論になります。(上記Excelファイルにデータ-あり)
この方法で校正して、冷蔵庫と恒温ボックスで検証してみる予定ですが、AthlonXP1600をマザーから取り外さなければならないので大変です。



【メモ】
【絶対温度】K (Kelvin)
熱力学から生まれ、物質の特異性に依存しない温度目盛を定義したものです。1848年、ケルビンによって導入され、0℃=273.15Kと定義されています。

2002年5月12日追記

バンドギャップ電圧理論値使用によるAthlon秋月温度計校正の検証

 「だんなさん」にいただいたアドバイスをもとに、バンドギャップ電圧理論値(1.205V)を使用してAthlon秋月温度計を校正してみました。
 室温測定用に秋月温度計を氷点(0℃)と沸点(100℃)で再度校正した温度計を使用して、ダイオード特性図の基準になる、AthlonXP1600サーマルダイオード電圧(室温25℃)を測定し、このサーマルダイオード電圧とバンドギャップ電圧から特性図を作り、Athlon秋月温度計を校正してみました。Excelファイル(38.5KB)
 バンドギャップ電圧理論値と測定温度(室温)におけるサーマルダイオード電圧から特性図の傾きが決まるので、CPUコアの温度(室温)をいかに正確に測定するかがポイントです。
 一般的に、サーマルダイオード電圧の変化は、1℃あたり2mVといわれている点からすれば、1.81mV少し小さいようにも思われますが、おのさんのデーターと比較しても大きくずれていませんのでOKとします。

PC OFF PC ON無負荷(下図の特性図より温度計校正)
室温 FAN Max FAN Min ドライヤーでケース内加熱
温度(℃) -273.15 25 48.3 50 55.2 60 70
絶対温度(k) 0 298.15 321.45 323.15 328.35 333.15 343.15
AthlonXP(mV) 1205.0 664.0 621.8 618.7 609.2 600.5 582.4




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