TTOP 更新情報 桃源郷の四季 実験レポート 作る楽しみ 道具箱 リンク

Duron CPUの裏面温度測定

2001年1月13日掲載
2001年3月10日追記


 Duron CPUは、コア温度測定用のサーマルダイオードを内臓していないので、マザーボードの温度センサー(サーミスター)による測定となり、実際のコア温度より低い表示となりがちです。
 そこで、Celeronの裏面温度の測定経験から、コア温度にもっとも近いと思われるCPU裏面の温度を測定できるように、秋月温度計センサーを取り付けて温度を測定してみました。(EP−8KTA+では付属USDMモニターとCPU裏面温度の差は無負荷で7.1℃ありました)

1.秋月温度計センサーの取り付け
 秋月温度計センサーSEIKO S-8100BをDuronの裏側に貼り付けて、ソッケトと基板の隙間からリード線を取り出そうとトライしたのですが、手持ちの耐熱電子ワイヤーL-10は0.6ミリあり、リード線を取り出すことができません。
 思案の結果、CPUのピンの間を通して、ソケットとCPUではさむ形で取り出すことにしました。CPUがソッケトから0.6ミリ浮く格好となるので少し不安もありましたが、レバーを倒すとしっかり固定します。反対側の2箇所にも線をかまし、3点支持でソッケトと平行になるように取り付けました。
 CPUクーラーを取り付けて、電源ON。 ピポ。 成功です。よっしゃ!


裏面にセンサーを置く

アルミテープで貼りつけ

表面にもサーミスターを貼りつけ

2.秋月温度計での計測
 Duronを取り付けて、秋月温度計とCompuNurseで、それぞれの温度を測定してみました。やはり、裏と表では3℃程度の差が見られます。
 なお、秋月の温度計は、室温でCompuNurseに合わせています。


3.リアルタイムに温度を計測
 この温度計センサー S-8100Bの電圧を温度表示に変換する方法を考案しました。
 S-8100Bは-8.0mV/°Kの温度係数を持つ出力電圧が得られる高精度温度センサーです。入力電圧によって出力電圧は変わりますが、秋月温度計では3Vの入力電圧がかかっています。この時の出力電圧は、S-8100Bセンサーカタログによると下表のとおりです。

入力−出力電圧(カタログより)
温度 入力3.0V 入力5.0V 入力5.5V
-20℃ 1.884V 1.908V 1.932V
+30℃ 1.484V 1.508V 1.532V
+80℃ 1.071V 1.095V 1.119V

 つまり、0℃の時の電圧を定数にすれば、測定電圧から簡単に温度が求められると考えました。
 測定温度=(定数−測定電圧)/0.008となると考え、定数を秋月温度計の読みと、その時のセンサー電圧から1.7713Vとはじき出しました。(実測で、30.5℃の時電圧は1.5273Vであった。30.5℃での電圧変化は:30.5℃×0.008V=0.244Vとなる。0℃での出力電圧は:0℃:1.5273+0.244=1.7713V)
 以下、Metexマルチメーターによる電圧取り込み写真と、エクセルによる温度変換グラフです。

電源OFFの状態

マルチメーターの電圧取り込み画面(この画像は後日取ったもの)
Excel による温度変換

excel による温度変化グラフ
(Duron600@107*9=963 Core1.8V 室温14℃)

4.センサー電圧と温度変換に関する考察
 ここまでの実験では、CompuNurse温度計で秋月温度計を15℃近辺で校正したもので、絶対値温度としてはあまり正確ではありません。また、出力電圧もS8100Bセンサーカタログ値より0.039V(温度換算4.9℃)高くなっています。(カタログ:30℃=1.484Vが実測:1.523V)
 そこで、S8100Bセンサーカタログの入力-出力電圧から、エクセルで散布図を作り一時回帰線(近似線)と計算式を求めてみました。この結果、1℃あたりの温度係数は-0.0081V(-8.1mV)となりました。また、0℃の時の電圧は1.7236Vとなります。
 下図の式 y=-0.0081x+1.7236は、Execlの散布図から近似式を自動的に求めたものです。

秋月温度計の校正と、計算式の定数を変えて、再度実験を行なう予定です。


2001年3月10日追記

5.秋月温度計の校正
秋月温度計の校正を、簡易恒温ボックス(おのさんのthermal diodeの温度特性を参考に製作)で、熱電対温度計、電子体温計を使って校正しました。
秋月温度計の高温側(100℃)の校正は熱伝対温度計で、低温側(37℃)は電子体温計に校正しました。
身近にある最も正確な絶対温度計としては、電子体温計が一番かと思います。また、熱電対温度計はデジタルマルチメーターに付属のもので、K型熱電対と温度補償センサー(0〜40℃)の組み込まれたものです。


簡易恒温ボックス:クーラーに白熱球を取り付けたもの

デジタルマルチメーター
GBW9000A
−50℃〜400℃:±3℃


オムロン電子体温計
測定範囲:32℃〜42℃
測定精度:±0.1℃

6.温度計の誤差比較とS8100Bセンサー出力電圧の測定
校正後、秋月温度計を基準に、マザーツールDMA001C、CompuNurse、熱電対温度計の温度と秋月温度計のセンサー出力電圧を測ってみました。
この結果、どの温度計も通常使用する30〜60℃の範囲では大きな差はありませんでした。ただし、CompuNurseは8個買ったのですが室温で1℃程度のバラツキがあり、秋月温度計に一番近いもので計測しています。

秋月温度計(℃) S8100B出力電圧(v) マザーツール(℃) CompuNurse(℃) 熱伝対(℃)
90.0 1.0667 88.3 88.8 92
80.0 1.1456 79.0 79.3 82
70.0 1.2248 69.0 69.4 72
60.0 1.3043 59.4 59.5 62
50.0 1.3838 49.5 49.6 51
40.0 1.4631 39.9 39.6 41
30.0 1.5423 30.0 29.5 31
20.0 1.6216 20.1 19.5 21
10.0 1.7008 10.1 9.0 10

7.S8100Bセンサーの「温度係数」と「温度-電圧特性」
校正した秋月温度計のセンサー出力電圧から、「温度-電圧特性」グラフと「温度係数」を求めて見ました。
今回の実験では、S8100Bセンサー温度係数は-0.0079と公称の-8mvより少し小さめですが、まあこんなものでしょう。ちなみに、S8100Bセンサーカタログ値で30℃〜80℃の範囲で式を求めると温度係数は-0.0083となりました。


また、この求めた計算式で温度を計算してみました。
この結果、温度係数を-0.00793にすると最も良いあてはまりとなります。
ただし、これらの実験結果を参考にする場合、計測器の誤差、センサーの熱応答性などの誤差要素を考慮しておくことが必要です。

秋月温度計
の読み
S8100B
センサー電圧
式:y=(1.7802-センサー電圧)/0.00793 式:y=(1.7802-センサー電圧)/0.0079
90.0 1.0667 89.97 90.32
80.0 1.1456 80.03 80.33
70.0 1.2248 70.04 70.30
60.0 1.3043 60.01 60.24
50.0 1.3838 49.99 50.18
40.0 1.4631 39.99 40.14
30.0 1.5423 30.00 30.11
20.0 1.6216 20.00 20.08
10.0 1.7008 10.01 10.05


8.Duronの正確な温度
Duronの裏面に貼り付けたS8100Bセンサー電圧から、温度係数(-0.00793)と定数(1.7802)を使って、グラフにしてみました。
使用したベンチマークは、スーパーπ104万桁とHea0507で比較しています。
校正前と校正後の比較をすると約5℃高くなりました。
これは秋月温度計校正結果に基づき、温度変換への式を、y = -0.008x + 1.7713 から y = -0.00793x + 1.7802を採用したためです。

Duron裏面温度 Duron600@107*9=963 Core1.8V 室温12.5℃ サイドFAN空冷)

ご意見・アドバイス等ありましたら、遠慮なくメールをお願いします。

TOPページへ 実験レポートへ